研究の主要な内容は、界面活性剤の溶液物性である。界面活性剤は溶液中で、ミセル、ベシクルといった会合体を形成する。その会合体の形成は、活性剤の分子構造、イオン性の場合はその対イオンの性質、添加塩の濃度及びその物性に依存する。2つの疎水基を持つ活性剤は、ベシクルを容易に形成する。正負の2つのイオン性活性剤が当量存在する場合(catanionic surfactant)は平衡系としてのベシクルを形成することがある。界面活性剤会合体の表面は、親水基もしくは対イオンが高濃度に濃縮し、一般の溶液では得られない状態である。しかもその形態は2次元的である。しかしイオン的性質は2次元方向と会合体と溶液(バルク)の3次元的側面も併せ持っていて、熱力学的興味は深い。3次元的静電相互作用を念頭に置いて、我々はイオン性会合体の熱力学の構築を進めている。
  混合系の場合、その性質(組成、CMC挙動、形態)は、活性剤の親水基、対イオン、疎水基に依存し、多くの現象を示す。現在までに多くの研究がなされている。一般的な活性剤の混合系は一通り試されている。しかし、混合系の現象を支配する分子間相互作用については、定量的な考察は進んでいない。Rubinghの式による分子間相互作用パラメータはその理論上の誤りの故に正確でない。また、会合体がミクロな系であるが故に一般の溶液で有効な正則溶液論が直接的に使えない難しさがある。
 界面活性剤の会合体は、生体膜と良く似ており、生命の発生、細胞内外での物質のやり取り、生体膜表面での物質の反応などのモデルとして重要である。また、会合体表面、あるいはその空間が、ミクロなものであるため、化学反応の制御に有用な側面を持っている。これらの点は、活性剤集合体の研究が、大いなる発展の可能性を秘めていることを示している。
 我々はいま界面活性剤集合体の形成をその組成との関係、分子構造との関係を調べている。また対イオン、親水基については生体膜との関係で興味深く調べようとしている。ただ物質合成がその壁である。

研究概要
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