大学のコンピュータ教育とIT革命
担当:趙
近年、「IT」(情報技術)あるいは「IT革命」という言葉が頻繁に使われている。「IT革命」とは、本当のところ、何なのかは、おそらく漠然としたイメージを持っている人が多いだろう。ITは、コンピュータ技術とネットワーク技術を中心とした統合的な技術で、ITを巡るさまざまな動きが生み出されつつある。確かに、IT革命から何か大きな流れが生じていることは間違いないようである。しかし、IT革命の実態及びその影響はまだ十分判明していない。なぜなら、IT革命はまさに現在進行している最中であるから、その影響を過大に評価する人もいるし、過小に評価する人もいる。いずれにせよ在学の大学生に対して、これからの生活と仕事には多かれ少なかれIT革命の影響を必ず受けることになるだろう。IT革命を無視することは誰でもできなくなると言っても過言ではないだろう。
不透明で厳しい21世紀をたくましく生き抜くために、有力な武器の1つであるITを身に付ける必要がある。IT革命に果敢にチャレンジすれば、大きなチャンスが生まれくるだろう。ITに関する大学教育において、漠然とせずに着実に一歩ずつ踏み出して徐々に情報処理の能力が身に付けられる。大学4年間では、最小限のコンピュータ教育を考え、次の4点の習得を重点的にして教育を行うべきだと思われる。
1.
コンピュータの基礎知識と基本操作
2.
文章作成(Word)
3.
表計算 (Excel)
4.
インターネットの知識と利用
IT革命の嵐の中で基本から始め、着実にコンピュータを使いこなせることは、大学教育において重視すべきなことである。専門的なコンピュータ教育を除いて、「情報処理」、「コンピュータ教育」などの基礎的なITに関する教育は、講義より、むしろ学生が自らコンピュータを触ってみたり、使ってみたりした方が最も重要である。大学生は未来を担う者で、大学の4年間で積極的に情報を活用してゆく能力(情報リテラシーの一環)を養うことは、ITの普及に寄与することが大きいと思われる。
1.コンピュータの基礎知識と基本操作
次のような基本的な知識と操作は21世紀の大学生に要求される。
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コンピュータの歴史
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ハートウェアとソフトウェアの概念
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パソコンの構成と各部分の名称
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ウィンドウの操作と切り替え
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OS(Operating System)、アプリケーション、アイコン、ブラウザ
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ドライブ・ディレクトリ・フォルダ
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ファイル・ファイル名・拡張子
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フロッピディスクのフォーマット・ファイルの保存・開く
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キーボードの練習(キーボード上でキーの配置と指の対応関係、ワープロ検定では1級から4級ある(900字/10分、600字/10分、400字/10分、300字/10分))
w プリンタ、スキャナなど周辺設備の設定
w ヘルプ機能の活用
2.Wordで文章の作成
Word(ワード)は文書の作成、編集、印刷を行うことができるアプリケーションソフトで、下記にリストされているWordに関する操作の仕方をマスターする必要がある。
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Wordの画面の説明(タイトルバー、メニューバー、ツールバー、ルーラー、スクロールバー、タスクバー、カーソル)
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MS-IME(英文と日本語の入力モードの切り替え、特殊記号の入力)
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文書の作成(文字の字体・サイズ・色の選択、ページの設定、ヘッダとフッターの指定、箇条書き、コピー、移動、削除、右寄せ、左寄せ、中央揃え、均等割付など)
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表の作成方法(罫線の引くと消す、セル・行・列の挿入と削除、サイズの指定、行と列の均等、文字の位置)
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挿絵(クリップとファイル)の利用(クリップアート・ファイルの呼び出し、サイズの調整、色などの修正)
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図形の作成(図形描画ツールの利用、テキストボックス、グループ化と解除、順序、図形の調整)
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ペイントで作った絵の利用
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科学技術論文の書式(二段組、数式の作成、図形と表の作成)
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文書の保存と開く
3.Excelの活用
Excel(エクセル)は、パソコンWindows上で使用できる最も完成度の高い表計算ソフトであり、いろいろな分野で活用されている。表計算・多数のグラフ機能・データベース機能を除いて高度な科学技術系の計算・演算機能も搭載されているので、その性能と計算能力は非常に多彩で優れている。
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Excelの画面とワークシート(メニューバー、ツールバー、数式バー、シート見出し、セル番地)
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データの入力(文字と数字の入力、データの削除・訂正、連続データの入力(オートフィル機能)、データのコピー・移動)
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数式の入力(セル間の演算、数式のコピー、相対番地と絶対番地)
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関数ウイザードによる関数の利用(関数ウイザードの起動、ペルプでの検索)
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表の修飾(文字のフォント・色・サイズ、セルの色・サイズ、罫線、表示形式の指定)
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ピボットテーブルでデータをクロス集計
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グラフ作成(グラフウイザードの起動、グラフの選択、グラフの編集)
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データベース機能の利用(数字、アルファベット、50音図の並べ替え、降順、昇順、優先されるキー、条件付きのデータ抽出)
Excelには以上説明した以外にも素晴らしい機能が多数そろっている。Excelは巨大なソフトであり、その使い方のすべてをマスターしようとすることは現実に不可能と思われる。即ち、Excelの機能の「底」はほとんど知られていないのが現状である。「必要な機能を、必要のときにすぐ探し出せる」という能力を身に付けることが肝要である。さらにExcelの進んだ使い方として、次のような主な機能がある。
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統計データ分析ツール
アドインで分析ツールを組み込むと、ヒストグラム、回帰分析、高速フーリエ変換(FFT)、分散分析、共分散分析、偏差値分析、t検定やF検定などが簡単に実行できる。
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関数
一般簡単な関数を除いて、数学・統計・財務・論理、データベースに関する各方面で有用な関数がたくさん用意されている。関数の名前や使い方を知らなくても、ヘルプで調べられ、その指示に従うだけで、簡単に利用できる。
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マクロ
ユーザー自身が使いやすいように作業環境を作ることができる。常に繰り返して使う複雑な操作は、メニューやボタンから即座に自動実行できるように設定できる。なお、マクロ機能は汎用性の高いVisual Basicのプログラムとして記述される。したがって、プログラミングの能力さえあれば、一見Excelをベースとしているとは分からないほどの専門のアプリケーションシステムを作成できる。
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数値計算
Excelは数値計算に幅広く応用されている。数値計算法は、昔から取り上げられてきた数学の1つの手法であるが、コンピュータの発達に伴って急速にその必要性が高まってきた。いわば、数学とコンピュータの力を工学における数量問題の解決に適用する学問である。今や、コンピュータ科学、ひいては情報科学の一分野として重要視されている。従来の方法は、伝統的な数値計算法に基づいて、自らフローチャートを描き、プログラミング言語を用いてプログラムを作成する。そして、コンピュータで実行して計算することになっている。ここに各々のプログラムを作成しなくても、高度の計算機能をもつExcelを活用すれば、基本数値計算の諸問題(高次・非線形の方程式、逆行列と連立方程式の解法、多項式近似と回帰法、数値積分と常微分方程式の解法)が簡単に解決できる方法をマスターしてもらいたい。
資料[2]に紹介した方法を用いれば、プログラムやコンピュータ言語などに関する知識が必要ではなく、マウスだけを動かせば、基本的な数値計算問題がほとんど解決できるから、情報工学を学ぼうとする学生諸君また情報処理技術者にとって、このような技術は非常に役立つと思われる。
4.インターネットの利用
これからの情報化社会を生きていく上で、これから必ず必要な知織であるネットワークとその利用方法について説明する。 ネットワークとは、コンピュータ同士のネットワークのことで、大学や大きな企業にはLAN(Local
Area Network)が張られています。世界中のコンピュータと接続できるインターネットにも接続できるようになっています。
私たちは、知らず知らずのうちにインターネットに囲まれて生活している。ここでは、インターネットの仕組みとコンピュータネットワーク、WWW(World
Wide Web)プラウザを使ってホームページの使い方、及びインターネットの危険性と情報セキュリティーについて説明する。
4.1 インターネットについて
インターネットは、1960年代半ばにアメリカで開発されたARPAnet(アーパネット)が元になっている。当時、アメリカはソビエト連邦(現ロシア)との冷戦で、軍拡競争のさなかにあり、大陸間弾道弾(ICBM)がお互いの国を標的にして緊張状態にあった頃であった。当時、アメリカ軍は、コンピュータに深く依存するようになっており、1台のコンピュータが故障した場合にシステムすべてが機能しなくなることは、国防上重要な間題であり、1台以上のコンピュータが故障してシステムが機能するネットワークを作ろうとしていた。また、ソ連からのミサイル攻撃を受けても国防システムが機能する広域ネットワークを望んでいた。
1970年ころ、国防総省高等研究計画局(ARPA:
Advanced Research Projects Agency)がインターネットの前身であるARPAnetを開発した。このARPAnetは、ネットワーク内の多くのコンピュータや回線が機能しなくてもネットワークが機能し、ネットワークにつながるコンピュータの構造と仕様に依存せず、機能しないノード(節:途中にあるコンピュータやその他のネットワーク機器)やパス(ノードとノードを結ぶ経路:専用線や電話線などの通信回線)を避けて自動的に再ルーテイングでき、他のネットワークからARPAnetに接続する揚合、ネットワークとネットワークをつなぐコンピュータは1台で良いという特徴を持っていた(それまでのネットワークは、異なるネットワークに接続する場合、ネットワーク内の各コンピュータがそれぞれネットワークに接続する必要があった)。
そのため、軍事利用以外に大学や研究機関にも利用されるようになり、利用者数は次第に増加していきた。ところが、当初の規格では、ARPAnetの成長を支えられなくなり、通信規格をPSN(Package
Switch Nodes)から、現在のTCP/IP(Transmission
Control Protocol/Internet Protocol)が作られ使用されるようになった。この通信規格は、理論上、無限大のネットワークを構築することができる。これを機に、アメリカでは、国防総省が作るNSFnet(ARPAnetは1980年代にこのネットワークに取って替わられる)や、草の根ネットワークであるUsenetやBITNET、商用ネットワーク(主にパソコン通信)のCompuServeやAmerica
Onlineなど利用者が増え、多くの人が複数のネットワークを使用するようになった。
1990年代初めに、アメリカ上院義員アル・ゴアによって提唱された、NREN(National
Research and Education Network)により、幼稚園から大学生までインターネットにアクセスしやすくし、研究・教育以外にも利用できるようにしようとするもので、コンピュータの世界で何が行われているか知るようになった。また、NSFや国防総省に関係のない私的なアクセスも増え、これらの人々もアカウントを持つようになった(当時は違法)。しかし、このようなユーザーが増えるに従って、ネットワークのオープン性が求められるようになり、費用の公平な分担を条件に商用利用を認めるようになり、全世界で爆発的に接続ネットワークとユーザーが増大し現在のようになった。したがいまして、インターネットの所有者も管理者もいないから、完全な「無政府状態」になっている。情報倫理に係わる諸問題が多く、情報のセキュリティー、コンピュータの不正利用、プライバシーの侵害、知的所有権の侵害などが挙げられる。
4.1.1 サーバーとクライアント
インターネットには、現在数千万台を超えるコンピュータが接続されている。これらのコンピュータは、通常サーバーとして機能している。サーバー(Server:サービスをする側)とは、情報やコンピュータ資源を提供するコンピュータのことで、パソコンレベルのコンピュータから、UNIXワークステーション、大型汎用コンピュータ、スーパーコンピュータに至るまで様々な用途や目的でつながれている。これに対してクライアント(Client:依頼人・依頼する側)とは、情報を受け取る側のコンピュータ(最も多いのはパソコンなどの端末)のことである。もちろん、皆さんが使用する端末もサーバーになり得るのであるが、クライアントとしてのみ機能している。
インターネット上には様々なサービスを行うサーバーが存在する。ホームページをサービスするWWWサーバー、電子メールをサービスするメールサーバー、フアイルをサービスするフアイルサーバーなどがある。
4.1.2 インターネットアドレスとドメイン
インターネットには、無数のコンピュータが接続されている。では、これらのコンビュータをどのようにして区別するか。インターネットに接続するコンピュータ同士が通信手段として使うプロトコル(Protocol:通信規約)には、TCP/IPを使用する。このTCP/IP通信において接続されたコンピュータを区別するために、IPアドレス(番地)という32ビットの識別番号を用いる。
このIPアドレスは、コンピュータにとって管理しやすいものであるが、人間にとって非常にわかり難いものであるので、人間にわかりやすく管理しやすいドメイン(Domain:地域)という名前を付けることになっている。また、インターネットに接続されている以上、コンピュータ1台に対してユニークなものでなければならない。また、このIPアドレスを自由に付けるわけにいかないので、これを管理する組織が必要になる。現在、アメリカにNIC(National
Information Center)というところが全世界のIPアドレスとドメインの一部を管理している。日本には、JPNIC(Japan
Network Information Center)というものがあり、日本国内のIPアドレスとドメインを管理している。ドメインは、階層横造をしており、各階層毎にピリオドで区切って記述される。ちなみに九州共立大学のドメイン名は、kyukyo-u.ac.jpで、IPアドレスは、「202.18.40.163」で登録してある。ドメイン名の初めの「kyukyo」は、九州共立大学を示している。その次のacは、academicすなわち学術研究機関(大学・専修学校・小・中・高等学校等)を示している。最後のjpは、japanを表している。ドメインに示すように「jp」はNICが管理している。その下のacとkyukyoは、JPNICが管理し、さらにその下には、学内のコンピュータ1台1台にホスト名が付いており、これらは学内で管理されている。
コンピュータの中では、ドメインをIPアドレスに変換して全世界のコンビュータと通信している。
4.2
インターネットにできること
インターネットが提供しているサービスには大きくの6つのものがある。
w リモートログイン
w 電子メール(E-mail)
w 電子ニュース
w ファイルの共有
w ファイル伝送(FTP)
w
情報提供サービス
WWW
w 情報検索サービス
4.3
WWブラウザでネットサーフィン
ここでは、WWWブラウザの1つであるInternet
Explorerを使って、ホームページを閲覧する方法を説明する。WWW(ワールドワイドウェブ)とは、世界中に蜘蛛の巣が張られているようなイメージからWebと呼ばれているようになった。インターネットが今日のように爆発的に普及した背景に、テレビやラジオのように一方的に情報を受け取るだけでなく、自ら情報を発信することができるメディアであったことが挙げられる。また、よく「ネットサーフィン」という言葉を耳にするが、WebをWaveと言い換えて世界中から波のように押し寄せる情報にうまく乗って、インターネットを使いこなすという意味から海でサーフィンをするイメージに例え、ネットサーフィンといわれている。
ホームページ(Home
Page)は、インターネット上で情報発信をする方法で最も普及している。ホームページとは、元々情報発信者が作る最初のページを示す言葉で、その他のページは単にページという。しかし、現在ではこれら全てのページの代名詞として「ホームページ」という言葉が使用されるようになった(日本で一般に呼んでいる「ホームページ」をWeb
Page「ウェブページ」と呼ぶべきである)。
現在ホームページでは、静止の画像だけではなく、動画や音声をはじめ、音楽や遠隔操作、電子メール機能やリアルタイムで音声と画像を送るテレビ、テレビ会議のようなこともできるようになってきた。いわゆるマルチメディア化が進み、ホームページを作る技術の発展で、誰でもインターネットを利用して情報の収集と発信できるようになっている。
ホームページを見るものをブラウザ(browser:拾い読みするもの)といい、現在Microsoft社のInternet
Explorer(Ver.5)がよく使われている(世界中ユーザーの8割以上を占める)。
4.4
情報倫理について
コンピュータとインターネットの進歩によって、大量のデータの蓄積・検索・転送などが可能になり、プライバシーが侵害される危険が高まっている。1980年代の前半にはネットワークの整備によって個人情報は国境を越えて流通するようになって、個人情報を保護において、国家間の差異が生じることを懸念してOECDは次のようなプライバシー保護の8原則を採用した。
1.
収集制限の原則
2.
データ内容の原則
3.
目的明確化の原則
4.
利用制限の原則
5.
安全保護の原則
6.
公開の原則
7.
個人参加の原則
8.
責任の原則
日本では、2年後OECDの勧告を受け、1988年12月にようやく「行政機関の保有する電算機処理に係わる個人情報の保護にかんする法律」が作られた。しかし、そのような法律が整備されても、増大するデータベースや急速なネットワーク化を考えると、個人情報は個人が守らなければならない状況である。自分が被害者にならないようにする積極的な態度と同時に、加害者にならないように常に心掛けることが大切である。
情報セキュリティーとは、情報システムを故障、破壊などのリスクから守るための物理的、論理的な安全対策・保護対策のことで、情報システムへの無権限侵入防止、入出力データ・プログラム・ドキュメンテーションなどの改ざん・破壊の防止など広範囲に渉っている。情報セキュリティーの目的は、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークなどを含む情報システムを利用するものに対して、情報システムの機密性・安全性・可用性を保ち、システム運用上に起こりうるリスクを回避または無くすようにすることである。
情報倫理に関する諸問題のいずれにしても、技術の発展は法制度に先行している。利用者のマナーとして、大切なことは他人に損害または不快感を与えたりするような行為を行わないように、各人がネットワーク上のネチケットを守ることに注意を払う必要がある。
課題について