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 バラッドは中世以来ヨーロッパ各地でうたい継がれてきた物語歌です。従って、類似の歌が英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、スカンジナビア語など各地の言葉でうたわれてきました。アメリカに渡った人々によって、古くからのヨーロッパのバラッドが新大陸でもうたい継がれてきました。
 詩人が洗練された文学性を意識して創作した作品であったら、このように遍く、しかも長い年月にわたってうたい継がれるということは、まず不可能でしょう。バラッドは、民衆の中から生まれた歌です。もちろん最初は、誰か或る個人が作ったものかもしれません。しかし、民話や伝説と同じように、それが伝承される過程で最初に作った人の個人的意図は消滅します。いやむしろ、或る長い期間伝承されて初めて、それはバラッドとして存在することになる、と言うほうが正しいでしょう。
 もともと文字を持たない民衆が歌い継ぐわけですから、口承の過程で細かいところは色々と変化してゆきました。地名が、うたう人の馴染みの地名に変化することなど、その端的な例になります。逆に人名などは、恐らく、元来は多様な固有名詞が登場していたのでしょうが、今日在る姿の中ではあまりバラエティに富んでいるとは言えません。多くのバラッドで男性の主人公がウィリアム、女性の主人公がマーガレットであるのは、そういう事情によります。個別的なものは付属的なものとして削ぎ落とされて、民衆にとって時代を超えてもっとも普遍的なもの、大切なものだけが凝縮されて伝わってきた、と言えます。
 そのような形で伝わるものは、従って、基本的に抒情歌ではなくて物語歌です。

--「バラッド −緑の森の愛の歌−」まえがきより

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