海外渡航前に行うべき事項

 海外渡航前は、海外で想定されている危機事象、危機事象に関する情報収集の手段、危機事象回避の心構えなどについて、十分に情報収集し、理解する必要があります。 
 また、保険加入などの手続きを進めると同時に、渡航の目的に応じて大学所定の手続きを行わなければなりません。

STEP1.海外渡航に伴う危機事象に対する心構えと準備

(1) 危機発生の可能性があることを十分認識する
 統計的にも日本は犯罪の少ない国であり、世界の中でも治安の良さはトップクラスであるため、海外渡航者は日本にいる時よりも犯罪に遭う確率が高いです。また、食生活、風俗習慣、宗教、倫理観などの文化、法律の違いからも、海外では日本とは異なる病気、事件・事故等に遭遇する可能性があります。
 つまり、海外では、日本にいるときよりも危機事象に遭う可能性が高いです。このことを渡航前からしっかり理解し、危機事象に対応するための準備をしておかなければなりません。

(2) 「自分の身は自分で守る」という基本原則を理解する
 海外では日本とは違った危険に遭遇する可能性が高い一方、渡航者は「自分の身は自分で守る」、すなわち自己責任という意識をしっかり持つことにより、渡航先の治安状況などを事前に熟知し、日本にいるときとは意識を切り替えることにより事件・事故を防ぐことができます
 トラブルに巻き込まれないためには、海外では日本の常識は通用しないことを自覚し、常に自らの安全確保を意識して行動することが必要です。特に以下の点については海外に渡航する前に十分に理解しておきましょう。 
 ●危険な場所には近づかないこと 
 ●多額の現金・貴重品は持ち歩かない、目立つ服装や言動は慎む等、渡航先で有効な危機事象回避の方法を身につけること 
 ●犯罪にあったら抵抗しないこと 
 ●見知らぬ人を安易に信用しないこと 
 ●常に自分の所在を明らかにし、連絡がとれるようにしておくこと 
 ●家族に定期的に連絡をすること 
 ●現地の法律を守り、宗教、文化等を理解し尊重すること 
 ●滞在先の法律遵守はもちろんのこと、薬物使用や未成年の飲酒など日本国内の法律に抵触する行為は行わないこと
 その他詳細は以下のサイトを参考してください。 
 🔍「海外安全ホームページ」(外務省) 

(3) 危機発生時のシミュレーションを行い、特に緊急時の連絡先を確認する
 人間はイメージできない突発的な状況に対して、適切な対応を取ることが難しいです。特に海外の慣れない環境での危機事象には、その対応が一層難しくなるでしょう。
 渡航前から危機事象の発生を想定し、自分の取るべき行動を具体的にイメージしておくことにより緊急事態にも冷静に対応することが期待できます。とりわけ緊急時の連絡先と連絡の方法を事前に確認・確保し、緊急時にすぐに応援要請ができるように準備しておくことが非常に重要です。

(4) 自身の健康状態をチェックし、海外渡航に耐えうるかを確認する
 海外では、食文化と風土の違いから日本にいる時よりも体調を崩しやすいです。しかし、海外で病気になった場合、日本とは違う医療システム、医療事情のため治療を受けることが困難な場合があります。そのため、必ず万全な体調を整えてから渡航に臨みましょう。
 ●渡航前は必ず自分の健康状況チェックし、海外渡航に耐えうるかを確認する。不安があれば迷わず医師に相談する。特に治療中の病気や持病があれば必ず医師に相談し判断を伺う。渡航実施の場合は英語等で書かれた診断書や処方箋等を持参し、現地で継続治療できる医療機関をあらかじめ確認する等の対策を取る。
 ●3ヵ月以上の渡航は、病院などで健康診断を受診する。教職員の場合は、6ヵ月以上の海外出張になる場合、労働安全衛生法により大学は当該教職員に健康診断を受けさせる義務がある。
★注意:海外での歯の治療は、海外旅行傷害保険が適用されないことが多く、また診察の予約が取りにくいなど、費用と時間がかかります、虫歯などはできるだけ渡航前に完治しておきましょう。

(5) 海外渡航中は、常に日本人、福原学園の教職員・学生としての自覚を持ちながら行動する 
 だれもが日本にいるときは一個人の**さんに過ぎませんが、一歩海外に出ると、周りから日本人、そして日本福原学園から来た者として見られます。そのため、海外渡航中は常に自分が日本、福原学園を代表する者としての自覚をもち行動する必要があります。 

STEP2.国際情勢、渡航先の安全性に関する情報収集と対応

(1) 情報収集のためのツールを活用し、国際情勢や渡航先について情報収集する
 海外への渡航と滞在は、異文化理解を深め、視野を広げる上で非常に有意義です。しかし、海外には治安情勢が極度に悪化していることなどの理由から、渡航を避けるべき国や地域があります。このような危険な場所には近づかない」ことが安全確保の最も確実な方法であるため、渡航先の治安状況や安全対策等について事前に外務省のホームページなどから情報収集した上で、渡航先の決定や渡航中の旅行等の計画を立てる必要があります
 また、渡航決定後も常に最新情報を収集し、世界情勢、とりわけ渡航先国・地域等の変化や動向(治安、犯罪の傾向、政治、生活環境、感染症情報、自然災害の頻度や文化・習慣・宗教・国民性、日本との関係や対日イメージなど)を注視・分析し、危機度・危機情報を把握しなければなりません。
 渡航先に関する各種情報の収集は、以下のサイトを参照してください。
 ●渡航先の安全対策基礎データ: 🔍海外安全ホームページ(外務省)
 ●渡航先の感染症: 🔍感染症情報(厚生労働省)や 🔍FORTH海外で健康に過ごすために(厚生労働省検疫所) 
 ●渡航先の生活環境: 🔍海外安全・生活情報(日本学生支援機構) や 🔍世界の医療事情(外務省)
★重要特に上記外務省の海外安全ホームページでは、治安が悪化したり、災害、騒乱、その他の緊急事態が発生したり、その危険性が高まっていると判断される場合に発出される海外安全情報等、日本人が海外に渡航するにあたり、知っておくべき安全確保に関する情報をたくさん掲載しています。渡航の決定に当たり、必ずこうした情報を十分に収集してください。 

(2) 渡航先で流行っている感染症などに応じて必要な予防接種を受ける
 海外では、衛生環境の整った日本ではほとんど見られなくなった感染症がまだ残存している地域が多くあります。そのため、出発前に十分な情報収集をし、必要に応じて予防接種を受けてください。特に、命に関わるような感染症については、予防接種は最も重要な対抗手段です。
 海外渡航者の予防接種には、主に二つの側面があります。
 一つは、入国時などに予防接種を要求する国(地域)に渡航するために必要なものです。入国時や乗り継ぎ時に「予防接種証明書」の提示を求める国があり、学校に入学する時に予防接種証明書を要求される場合もあります。
 もう一つは、自分自身を感染症から守り、周囲の人への二次感染を防止するためのものです。 外国では、日本にはない病気が発生しているし、日本にいる時よりも感染する可能性が高い病気があるので、予防接種を受けることで感染症にかかるリスクを下げることができます。必要な予防接種は、渡航先、渡航期間、渡航形態、自身の年齢、健康状態、予防接種歴などによって異なるため、事前に渡航先の感染症情報を収集するとともに、それぞれの予防接種について理解した上で、どの予防接種を受けるかを決める必要があります。。
 予防接種の詳細及び入国時に予防接種が必要な国などについては以下のサイトを参照してください。
 🔍感染症情報(厚生労働省)
 🔍FORTH海外で健康に過ごすために(厚生労働省検疫所)

(3) 無理な渡航はせず、状況によっては中止、延期を検討する
 ニュースでも取り上げられているように、世界ではテロ、暴動、デモや致命的な感染症などが頻発している状況であるため、前述の(1)の通り、渡航先に関する情報収集や情勢判断については渡航直前まで行う必要があります。また、自身の健康、心理状態や留学先大学の状況などに関する動向も常に確認し、考慮しなければなりません。
 海外渡航は時間をかけて大きな期待と楽しみをもって準備しているでしょうが、渡航先に危機事象が発生したり自身の健康状態に大きな不安が生じたりした場合、渡航の中止や延期も検討してください。無理な渡航は絶対にしてはいけません
 なお、本学は学生の海外派遣の実施や中止について明確な基準を設けています。詳細は次の資料を参照してください。
 🔍九州共立大学・九州女子大学・九州女子短期大学 海外派遣の実施、中止等に関する判断基準
 派遣学生ではない私的な目的で海外渡航する学生や教職員も、可能な限りこの基準に準じて渡航の有無を判断することが望ましいです。そして不安や迷いがあったら、すぐにキャリア支援課または国際交流・留学生支援室に相談しましょう。

STEP3.渡航手続きの確認と実施

(1) パスポートの取得や有効期限確認等を行う
 パスポートは海外渡航の際の諸手続きに絶対必要な書類です。海外への渡航が決まり、まだパスポートを取得していない場合は、早急に申請の手続きを行いましょう。
 また、すでに取得している場合でも、渡航する国・地域によっては、入国時に必要な残存有効期間を定めている場合がありますので、パスポートの残存有効期間を必ず確認してください。空港から出国される際に、渡航先国に要求されているパスポートの残存有効期間が不足する場合は渡航できません
 パスポートの残存有効期間については、滞在期間や入国目的等によって国ごとに異なりますが、おおよそ3~6ヶ月以上が必要とされ、長期滞在を予定している場合には、滞在予定期間より長い残存有効期間を要求されることもあります。さらに、諸外国の出入国管理は、国ごとに政策が異なり、国際政治情勢や内政事情等により予告なしに突然変更されることがあるため、渡航先の国の最新情報については日本にある各国の大使館や総領事館に確認されることを勧めます。
 パスポートの申請などの詳細については、以下のサイトを参照してください。
 🔍パスポート(旅券)(外務省) 

(2) 渡航先における入国ビザの要否と必要書類を確認し、必要に応じてビザ申請を行う
 ビザ(査証)は、外国人の入国に必要な入国許可証のことで、渡航する国が発行するものです。ビザの要否、手続きは国によって異なる上、ビザの取得にはパスポート、手数料とともに時間がかかる場合があるので渡航先の大使館や領事館などでビザの要否、必要手続き、必要書類などの情報を収集し、必要な場合は早めに申請しておきましょう。 

(3) 渡航期間を確定して旅行業者等に航空券の手配を依頼する
 海外渡航が決まったら航空券手配の準備をしましょう。特に出発時期が旅行シーズンなどの混雑時期と重なる場合は、座席確保のため早めに手配する必要があります。
 航空券は、渡航時期、利用する航空会社、購入方法などの条件によって行き先が同じでも料金が異なることがよくあるので、複数の旅行会社に見積もってもらい比較することをお勧めします。
 ビザを申請する際に、取得済みの航空券が必要な場合があります。また、早期取得の場合、航空券が割安になります。しかし、航空券発券後の変更や取消は多額の手数料が発生するので、ビザが取得できてから購入したほうがよい場合もあります。航空券の購入時期については自分の状況に応じて検討しましょう。

STEP4.滞在先の危機管理体制に関する情報収集

 渡航前には、滞在先の危機管理体制に関する情報を収集し、加入保険の判断など渡航準備に生かすことも必要です。具体的には、以下の内容を確認しておきましょう。
 ●滞在先(国・地域、留学先大学等)の社会保障・保険制度等の内容
 ●留学先大学等の危機管理体制や危機管理に関するガイダンス等の実施状況
 ●滞在先の在外公館の所在、連絡先及び業務内容
 特に滞在先の在外公館及び業務内容の確認は非常に重要です。
 在外公館とは、国外にいる日本人の保護や安全対策のための任務にあたっている外国にある日本の大使館や総領事館ことです。そのため、海外渡航中に事件・事故等に巻き込まれた場合、特に生命・身体が危険にさらされるような事態に巻き込まれた場合には、まずは現地の在外公館に援護等を依頼することがきわめて重要です
 ただし、外国にはそれぞれ独自の法制度があり、在外公館もその国の法令を尊重して活動して体制や権限等の制約もありますので、あらかじめ在外公館がどのようなサービスを提供しているかを確認しておきましょう。
 渡航先の在外公館の詳細や業務内容の詳細については以下のサイトを参照してください。 
 🔍「海外で困ったら―大使館・総領事館のできること」(外務省) 

STEP5.海外渡航中の緊急時連絡先の確認及び関係者との内容共有

 渡航直後の危機事態にも対応できるよう、渡航期間中における国内外の緊急時連絡先(本人、出張・留学先、宿泊先・ホームステイ先、滞在先の在外公館、警察・消防、救急、所属大学の緊急時連絡先等)をできるだけ渡航前に把握し、緊急時連絡先リストとして纏めて家族など関係者と共有しましょう。また、これら連絡先に変更が生じた場合(渡航前も渡航後も)速やかに関係者に知らせてください。
 連絡先の確認だけではなく、連絡先に確実に連絡できる手段を確保する必要もあります。海外ではインタネットによる連絡(メール、LINEなど)がより有効な場合があるため、予め海外で使えるメールアドレスを準備し、WIFIの使用状況も調べておきましょう。
 危機事象が発生した際には、大学が派遣した学生はもちろですが、私的な目的で渡航している学生や教職員についても、大学が本人や日本国内の家族からの相談に対応します。大学が組織として対応することにより、対応範囲が広がり、渡航者本人や家族の負担が軽減できますので、所属大学等の緊急時連絡先は必ず確認し、保護者と共有しておきましょう。
 なお、所属大学の緊急時連絡先の詳細は、キャリア支援課で確認してください。

STEP6.不測事態に備える保険の加入及び関係者との内容共有

 海外の病院での医療行為は日本とは医療事情が異なり、一般的に日本での治療費用より高額な場合が多く、海外旅行保険による支払保証を行わないと治療を受けられないこともあります。渡航中の不慮の事故や疾病に備えて、海外旅行(留学)保険に必ず加入しておきましょう。所有しているクレジットカードに海外旅行傷害保険を付帯する場合もありますが、旅行期間、適用範囲、補償額が限られていることが多いため、クレジットカード付帯の保険以外にも海外旅行保険に加入することを強く勧めます
 なお、本学から協定校などに派遣される学生については、以下の金額を基準に海外旅行傷害保険に加入することを義務付けているので、私的目的での海外渡航者もぜひ参考にしてください。

 本学が派遣学生に義務付けした海外旅行保険の補償内容:★は必須項目、◎は推奨項目
  ★治療・救援費:3,000万円以上、無制限が望ましい 
  ★個人賠償責任:1億円      
  ★傷害後遺障害:1,000万円以上           
  ◎傷害死亡・疾病死亡:適宜           
  ◎疾病応急治療・救援費:適宜   
  ◎旅行事故緊急費用:適宜  
  ◎キャンセル保険、プラン変更保険等:適宜         
  ◎携行品損害:適宜
  ★日本語による相談対応サービスの提供      
  ◎キャッシュレス・メディカルサービスの提供
 
 また、場合により渡航者本人の代わりに家族の方が保険の諸手続きをすることもあるので、必ず家族と一緒に、加入した保険の補償内容を徹底的に確認し、補償対象の事由と免責事由を把握してください。 
 海外旅行保険に加入する必要性及び重要性については以下のサイトを参照してください。
 🔍損害保険Q&A(日本損害保険協会)
 なお、航空券に保険が付帯されている場合もあるので、航空券を手配した旅行会社や航空会社の危機発生時の補償内容等を確認しておくと良いでしょう。

STEP7.海外渡航の届出及び担当窓口

 本学から協定校等に派遣される学生については派遣部署の指導のもと所定書類の提出が義務付けられていますが、私的な目的で海外渡航する学生及び教職員についても、目的・理由にかかわらず、渡航前には必ず事前に所属大学または部署に渡航の旨を連絡し、渡航情報の詳細(渡航先、渡航目的、渡航期間、国内外の緊急時連絡先等)を届出して海外渡航の様態に応じる手続きを行わなければなりません。また、届出事項に変更が生じた場合速やかに担当窓口に連絡してください。
 海外渡航の届出により、危機事象発生時、大学が組織的に対応し、渡航者に必要な援助を行うことができます。
 教職員の届出先及び内容は所属部署に確認してください。
 学生の届出先は所属大学のキャリア支援課です。届出書類の「海外渡航届」はキャリア支援課においてありますが、以下からダウンロードすることもできます。
  🔍海外渡航届(九州共立大学学生用)(表裏両面)
  🔍海外渡航届(九州女子大学・短期大学学生用)(表裏両面)

STEP8.「たびレジ」の登録

 渡航予定が決まったら,必ず外務省海外旅行登録「たびレジ」に登録してくださいまた,渡航期間中に小旅行等で別の国・地域に移動する場合にも,行き先の国・地域について「たびレジ」へ登録しておきましょう。
 「たびレジ」とは、外務省が短期海外渡航者を対象に、渡航先の安全情報などを提供するシステムです。「たびレジ」登録のメリットは主に以下の通りです。
 ●渡航先の最新防犯情報や注意事項が電子メールで提供されます。
 ●渡航先国・地域に所在する日本国大使館などが在留邦人に出す緊急一斉通報や最新の渡航情報もリアルタイムで受け取ることができます。
 ●現地で大きな事件や事故,災害が起こった場合には、登録された連絡先を基に日本国大使館などから安否確認の緊急連絡を行いますので、支援がスムーズに受けられます。 
★注意:外国に住所または居所を定めて3か月以上滞在する場合は,現地到着後現地の在外公館に「在留届」を提出してください。
 「たびレジ」及び「在留届」の登録方法などの詳細内容については、以下のサイトを参照してください。
 🔍海外へ渡航される皆様へ たびレジ・オンライン在留届 (外務省)  
 🔍「在留届」をご存知ですか?(外務省)

STEP9.その他の渡航前にすべきこと

 ほかにも危機管理のため、出発前は次のことを準備しておきましょう。
 ●滞在国から日本、及び日本から滞在国への電話のかけ方を調べ、家族など関係者と共有する
 ●不測の事態に備え、出発前に、重要書類(パスポート、保険証券、緊急時連絡先リスト等)のコピーを家族に渡しておく